■マドリー相手に勝利、しかしCLベスト16で散る
 試合終了の笛と同時にサンチャゴベルナベウのスタンドからは容赦ないブーイングの声が飛んでいた。レアル・マドリーのサポーターは指笛を慣らすことを止めなかった。そして、ドイツ人からは温かい拍手と声援がシャルケの選手たちに送られていた。

 ファーストレグを0−2で落とし、敵地へ乗り込んだシャルケに対する世間の目は冷たかった。昨季同様に無様な負け方をすると予想する人は少なくなかったはずだ。ドイツ人ですら、そんな風に考えていたかもしれない。

 しかし、試合序盤から敵陣へ攻め込んだのはシャルケだった。何度かのシュートチャンスを逃しながらも、20分フクスの先制ゴールが決まる。その5分後、Cロナウドにあっさりと同点弾を決められた。それでも40分にフンテラールが追加点。しかし、再びCロナウドの見事なシュートでレアル・マドリーが追いついた。

 ハーフタイム。身体を動かすチームメイトに遅れて参加した内田篤人は、初めてのサンチャゴベルナベルのスタンドをしげしげと見上げていた。先発を予想されながらもベンチスタート。膝の調子が思わしくないに違いない。ジャージをはいたままアップを続ける内田の姿に今日の出場はないだろうと思った。

■内田、残り10分からのプレー
 そして後半。53分にベンゼマのゴールで逆転したレアル・マドリーだったが、試合序盤からセンターバックの前のスペースでシャルケ攻撃陣に自由を与えてしまう流れは変わらないまま。57分、途中出場でCLデビューを飾った19歳のサネのミドルシュートが決まり、シャルケが3−3の同点に追いつく。直後にヘーガーに代えて、ゴレツカを投入し、勝利に必要な2得点をめざしたシャルケだったが、スコアが動かないまま迎えた81分、ディ・マッテオ監督は、内田を投入する。

「監督からの指示はなかった。ただ、点を獲るために前へ行かなくちゃいけないけど。お互いが行ったり来たりの展開で、間延びしていたので、そこはディフェンダーを助けてあげたいなと思ってた」

 トップスピードで行われている試合に途中出場する経験も最近ではほとんどない内田は、「もう頭でいろいろ考えると難しい」と振り返った。

 そして、84分フンテラールの逆転弾が決まり、あと1点で勝ち抜けられるところまでレアルを追いつめたシャルケだったが、結局試合は3−4で終了。勝利したもののシャルケのCLは終わった。

「4−3で勝ってたんだね」

 試合後のミックスゾーンで内田は開口一番そう話した。わずか10分間の出場に集中していたからだろう。そして、敗退したという現実は、敵地での勝利を喜ぶ気持ちにはなれなかったはずだ。

 昨年2月に右太ももと膝を痛めた内田は、W杯直前に試合復帰したものの、大会後に右の膝蓋腱の炎症が発覚。休養を取りながら回復に努めたが、今年1月のアジアカップも辞退していた。

 1月31日からのリーグ再開後は出場を続けていたが、2月21日は左太ももを痛めてベンチ外、28日のドルトムント戦には出場するも、3月7日のホッヘンハイム戦ではベンチスタート。しかし、この試合で想定外のアクシデントがあり、35分から出場している。

「ホッヘンハイム戦の練習のあと、監督と話して『100%のコンディションなのか』と訊かれて、『100じゃない』って答えたんだ。今までだったら、100ですって言っていたと思うけど、膝がごまかせないところまで来ているから。痛いのはもう諦めているけれど、動かなくなるのが困る。だから、100%じゃないと答えた」

 指揮官との会話は20分にもおよび、「初めてあんなに長く話した」と振り返る。そのなかで「あと2カ月だからなんとかする」という内田に対して、「2カ月は長いんだ」と監督は説き伏せたという。「だから、これからは出場時間も減っていくと思う」と内田。そして、「何も話さない監督もいるけれど、ちゃんと俺の意見も聞いてくれたし、監督の意見も聞かせてもらえた。だから、今日(レアル戦)、10分しか出なかったことも納得できているから」と何度も繰り返した。

 試合終了後、サポーターのところへ挨拶に向かう際、何度か振り返るようにしてセンターサークルを見ていた内田。その姿からは、CL敗退とその試合にわずかしか出場できなかった悔しさが伝わってきた。