ACL出場権獲得がかかる天皇杯だが、来季のACLは2月27日から始まり、3月1試合、4月4試合と例年にない過密日程となっている。決勝トーナメント1回戦がホーム&アウェイとなり1試合増えたことや、代表戦の日程などが影響したのだろう。

 以前からACLとリーグ戦を並行して戦い、勝つためには、選手起用のターンオーバーが不可欠だと語られてきた。よって、保有選手数を増やし、選手層を厚くすることをクラブ首脳陣は考えるに違いない。しかし、ACLをグループリーグで敗退すれば5月以降には、余剰選手が生まれてしまう可能性も高い。ましてや欧州チャンピオンズリーグのように、出場することで多額の収入が得られるほどACLは成熟していない。アウェイへの移動費出費だけでなく、ホームでの試合開催ですら収入増にはつながらないケースもあるという。

 とはいえ、ここ数年、ACLにおけるJリーグ勢の成績は芳しくない。選手層の薄さもそのひとつの原因なのかと思ったりもした。しかし、である。
「シャルケは今季CLを18名から19名の選手を入れ替えながら戦っていますね」
 深夜のCLのテレビ中継で、解説者の言葉が耳にとまった。
 そして、シャルケのトップチームの所属選手数を公式HPで調べたところ、24名しかいなかった。ドルトムントでは30名、バイエルンは27名。マンチェスター・ユナイテッドも29名だ(11月下旬現在)。

 JリーグではA契約(契約金の上限のない契約)の選手数は25名と定められているが、そのほかのB契約、C契約で選手を保有することは可能だ。よってトップチームだけで、30名を超える選手を保有しているクラブは少なくない。ACLに出場しないクラブも同様だ。
 欧州クラブの多くはセカンドチームを保有し、そこでプレーする若手がトップチームのバックアッパーとして存在している。だから、トップチーム選手の数が少なくても、万が一の事態に対応できるのだろう。

 そこで、欧州でのセカンドチームについて紹介しよう。

 8月下旬、シャルケの今季ホーム初戦の試合前にスタジアムで、2011−12シーズン、ドイツ王者に輝いたU−19チームの表彰セレモニーが行われた。Tシャツにジーンズというラフなスタイルで、ピッチに登場した若い選手たち。Jリーグなら揃いのジャージでという形になるだろうに……と思い、改めてその集団に目をやると、たった一人、ユニフォーム姿の選手がいる。シード・コラシニクだ。U‐19チームでキャプテンも務めていたディフェンダーは、今季からトップチームに所属している。2年前、17歳でトップデビューを果たしたユリアン・ドラクスラーと同世代だ。多国籍軍とも言われるシャルケでは、U−19からそのままトップへ昇格する選手数は意外と少ない。

 では、他のU−19の選手たちはどこでプレーしているのか? 大学などの部活動が活発ではない欧州。プロサッカー選手への道が絶たれたかと言えば、そうではない。ブンデスリーガ4部(日本の地域リーグのように地域限定リーグ)に参戦しているシャルケのセカンドチームに所属しているのだ。

 シャルケではそのセカンドチームをU−23(23歳以下)と呼んでいるが、クラブよってはアマチュアや、セカンドと呼ぶこともある。もちろん、23歳以上の選手も所属しており、トップから降格してこのチームでプレーする選手もいる。よって、選手の契約形態はプロやセミプロ、アマチュアなど混在していると聞いた。実際4部リーグはプロリーグではない。日本の地域リーグと同じように地域毎にリーグ戦が開催されている。

 4部リーグの試合もトップリーグ同様に週末開催が基本だが、トップチームと同じ日に行われることも少なくない。昨シーズン、大津(当時ボルシアMG)や宇佐美(当時バイエルン)がトップチームの試合の帯同メンバーに選ばれたもののベンチ入りが出来ず、かつセカンドチームの試合にも出られないというケースが多かったのも開催日が影響していたのだろう。

 試合日が同じであるけれど、トップとU−23の練習は別に実施されていることが多い。
 もちろん指揮官も違うので、別のチームというイメージが強いのだ。それでも、トップチームにけが人が出た場合など、U−23チームの選手がトップの練習に参加するし、同様に試合のベンチ入りをしたり、出場したりすることもある。
 トップとセカンド。違うリーグで戦う二つのチームではあるが、チーム間の選手の行き来には移籍という概念はない。まだ戦力にはならないが、今後の成長に期待する……というトップチーム未満の選手はセカンドチームに所属させておくことが可能というわけだ。

 しかし、U−23選手にとってのトップチーム昇格は、たやすいことではない。多くの選手が23歳以下の段階で、他クラブへ移籍(レンタルも含む)する。そして、新天地で活躍してやっとシャルケへ移籍して戻ってこられる選手がわずかにいるというのが現実だ。戻ってきたとしても世界各国代表との厳しいポジション争いは続いていく。

 Jリーグでも開幕当初はJサテライトリーグを実施していた。毎週末の試合は若い選手たちのモチベーションアップにもつながったが、サテライトリーグ参加のためにクラブは40名近い選手保有が強いられ、遠征費などの負担も増大で、サテライトリーグはなくなったのだ。
 結果、23歳以下の選手育成が大きな課題となったのはご存じのとおりだ。来季には、23歳以下選手の下のカテゴリーへのレンタル移籍期間の撤廃ルールがスタートする。若手選手の育成問題の解決につながることになればいいと思う。

 JFLに参戦していたジェフ・リザーブスをはじめ、セカンドチームを保有しているクラブもあるが、トップとセカンドとの選手の行き来は“移籍”という形をとらなければならず、ドイツのセカンドチームのようなバックアップチームとしての機能を果たすことはできない。
 Jリーグ各クラブの経営状態は決して芳しいとは言えない。そういう中でセカンドチームを保有し、地域リーグなどへ参戦させる余裕はないのかもしれない。しかし、二つのリーグに参加できる権利をJクラブに与え、トップチームの契約選手数を少なくし、若手選手の契約形態もフルタイムのプロ契約だけでなく、学業と両立させるセミプロ選手など、柔軟性を持たせたうえで、セカンドチームを保有できたなら、さまざまなメリットがあると思う。

 それは若手に試合出場機会を与えるだけではない。
 18歳になったばかりで、プロ契約を結ぶことが出来ても、プロとして生き残っていけるかは、また別の問題である。そういう意味でインターン期間のような“セミプロ”時代があるのも面白い。大学へ進学し、テクニックやフィジカル、サッカー頭脳を鍛えられたとしても、プロとしてやっていける性格や精神力など、プロクラブでなければ磨けないものもあるだろう(逆にそういうプロクラブでしか身につかない力を、Jリーグが持っていないとすれば、それはそれでまた問題だが)。
 そして、スリム化されて、20数名という少数精鋭で実施するトップチームのトレーニングは自然とレベルや効率があがることに繋がるのではないだろうか?

 練習場へ姿を見せると、雑談すらすることなく、ランニングを開始し、その後はすぐにミニゲームでガツガツとぶつかり合う。激しい球際、タッチを割ったボールへの執着心。試合さながらに感情がぶつかり合う。笑い声が起きることもほとんどない。シーズン中ならわずか90分弱だが、濃密な空気が漂うシャルケのトレーニングに、競い合うことで強くなるプロ集団を見た。

 Jリーグが日本サッカー界最高峰リーグであり、そしてアジアを牽引するためにも、もっともっと厳しい競争がチーム内に生まれるべきだと思う。
 選手数を増やすのではなく、逆に少なくし、力のあるものと、まだそこへ到達できていないものを区別し、鍛える。厳しさがチームを強くする。そんな改革がACLでの結果を導くヒントになるのではないだろうか?